南部鉄器に思う

日本人は、鉄とともに歩んできました。弥生時代の農耕機具に始まり、鍋や釜、大工道具。そして日本刀、茶の湯などの道具のように、芸術的極みにまで高めたものもあります。鉄の文化は、本来、日本人に染み付いていると思えます。また鉄は、最後は土に帰る素材です。ある意味で生きている素材です。生きている素材は、それを使用する過程において変化します。変化は、使い手によって、味わいに変わります。使い手の愛情に左右されるのです。私の愛用しているフライパンは、もう立派に私の愛する道具になりました。錆びないし、焦げ付かない、ある種の風情が宿りました。 
  すき焼き鍋を考えてみましょう。すきやきは、皆さん鍋で調理して、器に移すでしょうか?
否、真ん中に鍋を置き必ず皆で食卓を囲んで、目の前で調理するでしょう。
なぜ?それは目の前で調理することが、それ自体が味であり、鉄鍋が最高の器であり、最高の食器であるからなのではと思うのです。テフロン、ステンレス、アルミでは、この場合似合いません。もちろん肉厚の鉄のもつ熱の保持力が、美味しく調理するのに大変重要なのですが、私はこの場合、鉄のもつ器としての魅力に惹かれます。
「鉄を食そう!」
天ぷら鍋は、専門店へ行くと目の前で揚げてくれて、器的効果の演出にもなっているようですが、天ぷら鍋の場合は、どちらかというと、熱の保持力、熱に対する耐性を強調したく思います。是非こだわりやさん生活倶楽部の「専門店の天ぷら」を読んでください。天ぷらは、よい調理道具が必要です!
弊社の扱っている鉄器には、焼き付け加工が施されています。しかしながら鉄器は、実際均一の厚みをもっていません。厚いところと、薄いところがあります。その薄いところより鉄が溶けだし、現代人にとって重要な栄養素の「鉄分」の補給になります。鉄器は、健康面にも大変よいと言うことを最後に述べておきます。

                              (M、M)


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